何もしない力

この間のセミナーでは、「何もしない力」について説明しました。

と言っても、完全に何もしない訳ではないのですが、見た目では何もしていないように見えるし、自分でも何もしている感じはしない。だけど、凄い力が出る。当然体は楽というものです。

合気道なんかで、年を取った達人が、若い弟子たちを簡単に投げていたりしますが、それは一般的に考えられるようなやり方とか、体の使い方ではなく、楽な体の使い方をするからこそ、筋力差に関係なく相手を投げることが出来る。

またそうしたやり方を教えると、「全然やった気がしないです!」と言うのですが、やった気がしないからこそ、疲れないし、年を取っても出来るのです。

何もしない力というのは、そうしたものに通じる。

 

内容をちょっとだけ紹介すると、一つは四つん這いで強い力を発揮するというものですが、多分大丈夫だろうと思って、試しに四つん這いの姿勢で、女性三人に乗っかって貰いましたが、女性三人であれば、全然楽勝でした。

参加者はまだ教えていないのもあって、背中や腰の力は、まだ出来ていませんが、肩の秘伝は教えましたから、肩は大分使えるようになっている。

それで四つん這いになった女性の肩甲骨辺りに私が乗っかっても、全然楽勝のようでした。

60キロ近い重さが加わっても、殆ど疲れずに耐えることが出来る。

しかしウエイトトレーニングを本格的にやっている女性でもなければ、普通は耐えきれなくて潰れてしまうでしょう。

これが何もしない力です。

 

こうしたように隠れた力が誰しも持っているのですが、重要なことはそれだけではなく、物事に対する取り組み方も、全て同じだと言うことなのです。

どうしても殆どの人は、何かやっている方が、効果があるような気がする。

つまりやった感のするもの、努力感のするものを求めて、それが大事だと思うのですが、実はそうではないということなのです。

これは元々そういう感覚の持ち主であればいいのですが、そうでなければ、自分でその感覚を掴むというのは中々難しい。

どうしてもバタバタしたくなる。

 

最近では新型コロナで騒いでますが、メディアも不安を煽ることもあって、バタバタしてしまう。

スポーツにしても、一生懸命になるのはいいのですが、自滅したりする。

余計なことはしないというのが、大事なのですが、何が余計なのかが分からないから、それがとても難しいんですね。

それでいて、本当に必要なことはやらないものなのです。

 

どこかが痛いみたいな時でも、新たに何かいいストレッチとか体操とか、サプリメントとかプラスする事よりも、痛くなるようなことを、まず止めるということが大事で、それが最も効果が高いものです。

しか生活スタイルや考え方が、欧米化したこともあって、無駄を省く文化を忘れ、今はプラスすることばかり考えるので、無駄を省くとか、間違ったことを止めることよりは、「何かいい方法ないですか?」と、何かをやりたがる。

 

マッサージのような施術で例えると、下手くその人は、バタバタ、ごちゃごちゃ動かして、本人はやった気がするのですが、受けている方からすれば、もっとやって、もっと強く押して、みたいに感じたりする。

圧を加えて、遊びを取った後、そこからようやくスタート地点になるのですが、スタート地点に着いたら、もうゴールしたと思って、あちこち動かすものだから、まるで効かないんですね。

そうではなく、静かな感じで圧を加えていくことによって、スムーズにスタート地点に着き、更にそこから深部の凝りなどを解すことが出来るのです。

 

また私の施術は、素人の人が見れば、「あれで効くの?」と思うように、やっている感、頑張っている感がまるでしません。

逆に私の整体の生徒の方が、やっている感、頑張っている感があって、効きそうに見えたりもしますが、実際はそうではない。

何にもやっていないように見える人が、実はものすごい力を持っているものなのです。

 

侍の世界で言えば、やっている感、頑張っている感、努力感を感じる動きは、簡単に動きを読まれて直ぐ斬られてしまう。

それに対し、侍の動きは、やっている感のようなものはまるでなく、いつの間にか斬られているという、目に見えない動き、消える動きなのです。

これが最も強い力、凄い力を発揮する。

 

侍だけでなく、世の中のこともそうなのですが、それが分からない人は、「あいつは何もやっていない!」と思ったりもするでしょう。

そうではなく、頑張っている感のあるもの程、結果や効果、パフォーマンスは低く、何もやっていないような人が、とんでもないような結果を出していたりする。

それを理解出来ないからこそ、「あいつは天才だ」とか、「あいつだから出来るんだ」といった解釈になる訳です。

 

大してやっていないのに、凄い力を発揮したい、大きな結果を出したい、楽にやりたいという人は、何もしない力を身に付けられるといいです。

それには今までの思い込みを捨て、感性を磨き、どういうものが努力感があってダメなのか、もしくは一流たちはこういう努力をするのかとか、こういう考えなのかとか、こういった取り組み方をしているんだ、といった勉強を続ければ、少しずつ分かって行きます。

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