宮本武蔵が書いたとされる五輪書、火の巻に「四手(よつで)をはなすということ」が書かれている。
「四手をはなす」とは、敵も自分も同じ心で、互いに張り合う状態になっては、戦いははかどらないものであるから、張り合う状態になったと思ったら、それまでの狙いを捨てて、別の手段で勝つことを知るべきだというのである。
大ぜいの合戦にしても、四つに組み、張り合う状況になっては、決着がつかず、人員の損害が大きくなる。早く張り合う心を捨てて、敵の意表を突くような方法で勝つことが一番である。
また、一対一の戦いでも、四つになったと思うときには、そのまま狙いを変え、敵の状態を見きわめて、別の有利な手段で勝利を得ることが肝要である。よく判断することである。
五輪の書 宮本武蔵原著、大河内昭爾訳 教育社 18項