選手の自主性

以前自主性について書いたことがありましたが、難しいことでもあるので、もう一度書こうと思います。

興味のある方は、過去の記事を読んでみて下さい。特に「選手たちに自主性は必要ない」は、マラソンの小出監督の教えを書いているので面白いと思います。

・選手たちに自主性は必要ない
・自主性の誤解

 

まず言うまでもないことですが、自主性がなければ話にならない。

普通は何でも押し付けてしまいがちですよね?大学に行った方がいいとか、これをやった方がいい、こうしなさい、ああやりなさい、こうなりなさい、これをすれなど。

よく自分がいいと思っているものであれば、押し付けにならないと思っているのですが、そんなものは関係なく、自分の考えを押し付けたものは、全て押し付けです。

だからそうならないように、自主性を大事にしなければならないし、それを育てていかなければならない。しかしそうしたことを理解した上で、自主性を否定する。

 

例えばスポーツでは、筋力が絶対的に必要となる。しかしその上で筋力を否定することで、見えて来るものがあるのです。

いい所ばかり見ても、結婚してみたら実は違った、なんてこともあると思います。

武術家の黒田鉄山という先生が、呼吸法についてこう説明している。

いかなる状況においても有用な呼吸が絶えず行われるようになるためにこそ否定されるべきなのだ。悪しき日常の呼吸の仕方からは、正しいものは生まれない。本当に必要なものだからこそ、まず「否定」するのだ。「気剣体一致の武術的身体を創る」

日本の武道では、このように自分を否定する所から始まり、そうしたことから達人の世界が見えてくるのですが、今の日本は欧米化してしまったため、そうした考えはなくなっています。

 

自主性を否定することなどは、殆ど聞いたことがないと思いますが、これはかなり奥の深い話、レベルの高い話だからです。普通はそこまでたどり着けません。

だからその前に、押しつけとはどういうことなのか、その意味を知る所から始めなければいけないし、また我儘とは何かが十分わかっていなければ、自主性との区別も出来ないでしょう。

その辺を勉強した上で、次のステップの自主性の否定になりますから、多くの人には関係ないと言えば、関係ないような話。ただ最終形のようなものは、知っておいた方がいいですし、知らなければ間違ったことを鵜呑みにしてしまうので、一応説明する訳です。

 

自主性の否定は、小出監督の言葉が、非常に分かりやすいとは思いますが、私の学生時代の経験の話をすると、

私は小学生の頃から筋トレを、「自主的」に行ってきましたが、もし自主性がいいとすれば、いい結果になるはずなのに、スポーツの面で言えば、決していい結果にはならなかった。なぜならやり方が間違っていたからです。

また高校の時は、チームメイトの誰よりも一生懸命練習した。休みの日であっても、「自主的」に練習や筋力トレーニングを行った。自主性がいいのなら、私がチームの中でも、トップレベルの成績を出していてもおかしくないはずですが、年中どこかしら体を痛めていたし、成績など全く出なかった。

当時の私は、練習やトレーニング、また体のことも全く分かっていなかったからです。

つまりどんなに自主性があろうとも、やり方が間違ってたらいい結果などは出せない。むしろ自主的にやればやるほど、ダメになる。

 

「選手の自主性に任せている」などという指導者を何人も見てきた。
僕にはとても「真似」できない「指導法」だ。言わせてもらえば、これは、指導者の責任逃れ」、「逃げ道作り」としか思えないんだ。「君の眠っている力を引き出す35の言葉 小出義雄著」

天才であればいいけど、知識経験の少ない学生が考えるものは、たかが知れている。だから指導者であれば、選手任せの自主性というのは、まるで分っていないから、自主性に任せるのであって、分かっていればそうはならない。

正しい方向を指し示しつつ、選手たちは自主的にそれに乗っ取って努力する。

 

タイガーウッズが成功の方程式として、

「上手くなるためには質の高い指導を受け、その教えに沿って自ら努力するしかない。成功への方程式はそれしかない。」

と言っています。

タイガーウッズであっても、自分の思い付きで練習やトレーニングをしたのではなく、質の高い指導を受け、その教えに沿って、「自主的」に努力してきた!

これが求められる自主性。

この自主性がなければ話にならないし、逆に何もない所、知識経験がない状態で、自主的に努力させればダメになる。「自主的」という言葉は、非常にいい印象を受けますが、そうした上手い言葉に惑わされない様に。

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