昔の日本人は仏教や神道を信じ、仏や神を恐れ敬った。また親などの存在も尊いものでした。しかし今の時代は違う。親も親と言うより友達みたいなもので、仏や神を信じることもなくなり、何かあった時には、文句を言って自分ではなく相手を変えさせようとする。
そのため今の時代は、誰も教えてくれる人がいない。その結果なんでもありの考えになりがちとなる。
身近に師や先生がいてくれれば、それを諭してくれますが、そういう人も中々いないでしょう。じゃあ、どうするかというと、後は自分自身で何とかするしかない。
宮本武蔵が自分の短所を書いて壁に張り、座右の銘にした「独行道(どっこうどう)」がありますが、それを紹介します。
一、世々の道をそむく事なし
世の中のさまざまな道に背いてはならない。
一、身にたのしみをたくまず
わが身の楽しみを追い求めてはならない。
一、よろずに依枯(えこ)の心なし
どんなことにもそれをたのみにする心を抱いてはならない。
一、身をあさく思、世をふかく思ふ
自分中心の心を捨て、むしろ世の中のことを深く考えるように。
一、一生の間よくしん思わず
一生の間、欲深いことを考えてはならない。
一、我事において後悔をせず
一度したことについては後悔をしてはならない。
一、善悪に他をねたむ心なし
他人の善悪について嫉妬してはならない。
一、いずれの道にもわかれをかなしまず
いかなる道についても(おそらく人生、つまり愛する人との別れ、あるいは肉親の死なども含めて)、別れを悲しんではならない。
一、自他共にうらみかこつ心なし
自分のことについても他人のことについても、不平を言ったり嘆いたりしない。
一、れんぼの道思いよる心なし
恋愛には感心を抱くな。
一、物毎にすきこのむ事なし
物事に好き嫌いを持ってはならない。
一、私宅においてのぞむ心なし
自宅を豪華にしようという心を持ってはならない。
一、身ひとつに美食をこのまず
常に身一つ簡素にして、美食を好んではならない。
一、末々代物なる古き道具を所持せず
代々伝えていくような骨董品を持ってはならない。
一、わが身にいたり物いみする事なし
体にこたえるような飲食、つまり暴飲暴食や無謀な行動をしてはなはらい。
一、兵具は格別 よの道具たしなまず
武具については特別な物を好んではならない。
一、道においては死をいとわず思ふ
自分の道を貫くためには、場合によっては死に向かうこともあるが、それを避けてはならない。
一、老身に財宝所領もちゆる心なし
財産を貯えたり宝を持ったりしてはならない。
一、仏神は貴し仏神をたのまず
仏や神は貴いけれども、これを頼りにしてはならない。
一、身を捨て名利はすてず
自分の命が危険にさらされても、名誉心を失ってはならない。
一、常に兵法の道をはなれず
常に兵法の道から離れてはならない。
(現代語訳 井沢元彦氏)