臆病の克服法

あけましておめでとうございます。

今年初めは、臆病克服の話。

昔北条時宗と言う人がいましたが覚えていますか?鎌倉時代中期、元が攻めてきた元寇がありましたが、その時に活躍した人ですね。

その北条時宗と、中国から帰化した臨済宗の無学祖元(むがくそげん)禅師との問答を紹介します。

ちなみにそれまでの日本の戦い方は、

「やぁ~やぁ~我こそは」

といった、まず先に名前を名乗る戦い方でしたが、元はそうではなかったので、当時はアッチョンブリケだったようです。

ついでに、「やぁ~やぁ~我こそは」というのは、実は相手に向かって言うと言うよりも、それをちゃんとメモる人がいて、恩賞をもらうためでした。

じゃないと、言ったもん勝ちみたいで、何も分からないですからね。

 

ある時、北条時宗は、無学祖元禅師に尋ねた。

 

時宗:「人の世における最大の苦労は臆病です。私は武士でありながら臆病で困っているのです。これを解脱させてもらいたいのですが。」

禅師:「臆病の解脱とは容易(たやすい)。臆病の原因となっている所を断ち切りなさい。」

時宗:「臆病で気が弱い心(怯懦 きょうだ)は、何処から来るのでしょうか。」

禅師:「時宗自身から来るのです。」

時宗:「臆病は、私の最も嫌うところです。どうしてそれが時宗から出て来るのでしょうか。」

禅師:「試みに明日より時宗という自己を棄て去って来なされ。」

時宗:「では、どうしたら時宗を棄てることが出来ますか。」

禅師:「一切の妄念思慮を断ずるのです。」

時宗:「一切の妄念思慮を断ずるにはどうしたら良いのでしょうか。」

禅師:「ただひたすら座って坐禅を組み(只管打挫)、心と精神の静寂を求めることです。時宗に浮かんでくるすべての想念は相手にせず、心の奥深い根源世界を求める事に徹しなさい。」

時宗:「私には余りにも俗事が多すぎて、座禅する時間が少ないのです。」

禅師:「いかなる俗事に携わろうとも、一切の俗事がそのままの修行の道場になるのです。修行が進めば、やがて時宗の内なる真実の心が何たるかを悟るでしょう。」

このような説得の後、時宗に”五ヶ条の要訣”を授けた。

 

五ヶ条の要訣

一、外界の事物に対して全く無頓着なること。常に精神を磐石の如く保ち、世界に只吾れ独りなりと思うべし。しかも精神坦然として恭敬を忘るべからず。

二、精神を常に澄水の如く保つべし。精神動揺して外界の事物に頓着すれば、必ずその他を忘却すべし。突然の怖畏は、この間より生ず。一方に注意すること深ければ一方の油断もまた深きなり。務めて平如として精神を臍下丹田に置くべし。

三、才略智謀に恃(たの)むところあるべからず。恐懼(きょうく)病は才略の謀計を現出するの原動力なればなり。その機に当り変に応じてこの心を失わずんば、
必ず霊妙なる当意即妙の策略智計を生ずべし。よろしく平の時と非常の時とその心を一にすべし。

四、勇猛の士気はよく白刃を踏むべし、柔弱の肢体は、窓隙(そうげき)の風をも忍ぶ能わず。よろしく常に勇猛の士気を保持すべし。

五、見るところ、狭少なるときは、その眼光見識狭少にして、胆量また自ら狭少なり。

すべからく常に注意してその心量を拡大すべし。

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