昔ウエイトトレーニングを本格的にやっていたけど、ベンチプレスで120キロぐらい上げれる様になった辺りから、ふと、「これじゃあ外国人に勝てないんじゃないか」と思い始めた。
その当時で言えば、体重を70キロに増やせば、140キロは何とか上げれるとは思いましたが、60キロのままでは、難しい気がしたし、体重を増やしたとしても、200キロをとてもあげられる感覚は無かった。
そうすると、階級制のあるスポーツであればいいけれども、そうでないものでは、外国人のパワーにはとても太刀打ちできない。それであれば、他のものをもっと強化していくべきなんじゃないだろうか、と言う考えが出ていたのです。
またその頃、高岡英夫さんの本を読んだり、桑田真澄さんが、甲野善紀さんに古武術の指導を受けて復活したり、桐朋高校バスケとボール部が古武術を取り入れ、結果を出したり、末次慎吾さんがナンバ歩きを取り入れて、200mで銅メダルを取ったりしていた。
そうしたことから、日本人が外国人に勝つためには、また日本人が金メダルを取るためには、体の使い方を勉強していくしかない、と考える様になった。
ただ体の使い方と言っても、高岡英夫さんのゆるのようなものは、やっていたと思いますが、どうしていいかもよく分からない。
その中で一つやったことは、ウエイトトレーニングを完全に辞めることだった。
筋肉があるから筋肉に頼る。またそれにしがみつき、新しいものが入って来なくなる。それでウエイトトレーニングを、完全に辞めた。
最初はやっぱり筋肉がある方がいいから、ちょっとやったりもしたんですけどね。しかし完全に辞めた。
それともう一つが、大腰筋の開発。
これは高岡英夫さんがよく言っていたことだし、胴体力を唱えた、天才伊藤昇氏も著書の中でこれからは大腰筋の時代になると言っていたし、また陸上で外国人と日本人の体を調べた結果、大腰筋の太さが違ったことが明らかになったりしたことから、大腰筋を使えるようになるしかない、と考えた。
しかしこれがまた難しくて、大腰筋が分かるまでに、確か10年ぐらいかかったと思います。
それまでは、まるで闇の中で、前に進んでいるのか、後ろに進んでいるのか分からないような状態。
ただそれもやり続けることによって、光が見え、分かって来た。それによって、ようやく体の使い方の世界に入れたのです。
大腰筋が分かることによって、今までとはまるで違う世界が見える。また今まで分からなかったことが、一つに繋がって分かったりもした。
たとえで言うなら、パソコンを手に入れた人と、パソコンを手にしていない人、またパソコンを知らない人との違い。
パソコンがあれば、効率よく仕事が出来たり、色んなことが出来たりしますよね?しかしそれは、パソコンを手にしない限りは、よく分からないし、努力してもその世界には辿り着けないし、理解出来ない。
腸骨筋や大腰筋といった、腸腰筋が少しずつ分かって来て、軸と言うのも少しずつ分かって来た。
もちろんそれに伴い、凡人のアスリート、一流のアスリートの違いも分かって来た。
また体は大腰筋が全てではなく、他にも色んなことがある。
胸の使い方、肩の使い方、肘、膝の使い方など、分からない事、出来ない事、課題が山ほどある。
分からないものだから、常にこうか、ああかみたいなことを考え、悩んでいるのですが、しかし課題が無い人よりはいいのかもしれない。
また分からないなりにやっていると、次第に分かってきたりもする。
これがウエイトトレーニングなら、体はきついですが、頭は楽ですね。
もっともトップビルダーは、トレーニングや栄養、体のことを研究して、皆頭のいい人ばかりです。
頭が余り宜しくないと、「生まれつき大胸筋が発達しないんだ」みたいな考えになる。
今スポーツのトレーニングも進化してきて、徐々にトレーニングから鍛錬のようになって来た。
トレーニングというのは、外国のもので、根本に無いと言う発想から、付け足す、強化するというのがトレーニング。
これに対し鍛錬は、日本とか東洋のもので、あると言う発想から、それを最大限に使えるようにするために、強くすると言う以上に、開発するのが鍛錬。
また武道の世界では、自分が天才的で、色々閃いたりしたとしても、その全ては先人たちが既に知っているものだと言われています。
たとえば自分一人が天才であったとしても、何代もの天才が積み重ねてきたものには叶わない。それが空手の型などに隠されていたりする。
科学も未だ追いついてはいない。
武道の達人たちがどんどんいなくなっていき、一時は全てが失伝していくのかとも思われましたが、今は情報化の時代となり、体の使い方、極意みたいなものが、簡単に知れるようになって来た。
スポーツも体の使い方の時代、鍛錬の時代に進み、更に進化するのかもしれませんね。