この世の生が完全であった時代には
誰も価値ある人間に注意を払うこともなく
能力ある人を敬うこともなかった。
支配者とは樹の天辺の枝にすぎず
人民は森の鹿のようだった。
彼らは誠実で正しかったが
自分たちが「義務を果たしている」という認識はなかった。
彼らは互いに愛し合い
しかも、それが「隣人愛」だとは知らなかった。
彼らは誰も欺すことはなかったが
それでも自分たちが「信頼すべき人間」だとは認識していなかった。
彼らは頼りになる人間だったが
それが「誠」だとは知らなかった。
また、与えたり、受け取ったりしながら自由に生きていたが
自分たちが「寛大」だとは知らなかった。
このゆえに、彼らの行為は語られたことがない。
彼らは歴史をつくらなかった。