合気道で「座りの呼吸法」と呼ばれるものがあります。
お互い正座した状態から、相手に両手首を持って貰う。そこから基本の型では、相手の脇口に腕を伸ばして、相手の肘を上げ、そこから横に倒したりする。
しかし相手が投げられまいと、踏ん張ったりすると、基本の型通り出来ない事もある。
そうすると、「合気」と呼ばれるものが分かっていないと、正面に押してダメだから、横はどうだと、左に押す。
しかし左がダメだったから、今度は右にしてみたけど、それもダメで、じゃあ下はどうだ、上はどうだとやるのだけど、全部出来ない。
これは本人にすれば、色々試しているようだけれども、実は質的に全て、全く同じことをやっている。だからどんなに右だの左だのとやっても出来ない。
右とか左とか形の問題ではなく、質の問題で、質を変えなければならず、その質を変えることが中々難しいのですが、この「座りの呼吸法」は、壁に対する対処、考え方と全く同じなのです。
呼吸法とはこんな感じ。
昨日も壁の話をしましたが、今までの人生の中で、壁だとか、壁を乗り越えろとか、よく耳にして来たものの、そもそも「その壁って具体的に何なの?」と、壁について、具体的に考えたことは無かったかもしれない。
もちろんスポーツの壁、ビジネスの壁、人間関係の具体的な問題、壁はそれぞれ違い、「私が今抱えている壁はこうです」と、いう人もいるかもしれませんが、そうしたものではなく、それらの本質的なもの、共通するものの分かりやすく具体的なものが何かを、余り分かっていない。
それもあって、壁に出会った時に猶更苦労するし、分からないものに恐れを抱くように、壁に対して、必要以上の不安や恐怖を持ってしまう。
では、壁とは具体的に何か。
それは、
「質的な限界」
が壁。
自転車、軽自動車、スポーツカーなど、同じ車でも、質的に全然違うし、それぞれの質の限界がある。
たとえばオリンピック選手と言えど、自転車で150キロは出せませんが、それが自転車の壁になり、もし150キロ出したいのであれば、エンジンを積んだりして、質を変えなければならない。いくら筋トレしたって、肉体の力だけでは無理でしょう。
ちなみに競輪が大体MAX70キロぐらいで、ロードレースの下りでは、100キロぐらい出たりする。
昔ファミコンてありましたが、スーパーマリオやドラクエが流行ったものの、映像の限界、容量の限界があって、それを変えるには、スーパーファミコンが必要だった。
また携帯することは出来なかったから、携帯してゲームをするには、ゲームボーイに質を変える必要があった。
私のゲームはスーファミで止まってますが、今はプレステ4PROとか、Nintendo Switchに、更に進化してますね。
これらから考えると、限界というのは、質的なもので、量ではないと言うのが分かるし、進化も強化の延長上にあると言うより、質的変化を起こしたものが、進化することだと言うことが分かる。
量によるものは、まだ伸びしろがあり、壁、限界点に達していないのです。
しかし私は日頃から質について考える習慣がありますが、一般的に質について考えられることは少ない。
だから多くの人は、300円の整骨院とか、60分2,3千円の整体で、満足出来る。
昔大学生たちに誘われて、焼き肉食べ放題に行きましたが、焼き肉と言うより、油ばかりだった。「こんなの食っているの?」と思いましたが、体を動かしている学生などは、質より量ですからね。
それと同じように、整体なんかも、高い質を求めるのではなく、脂身だらけのような安い整体が一番人気があり、質が高いものを求める人は、ピラミッド型に少なくなる。
また質が分かっていないから、値段だけを見て、安い方を選ぶことも多い。
添加物など、聞いたことはあるぐらいで、そんなものは存在していないぐらいに、全く気にしない人は多いものです。
質は、後から言われれば、コロンブスの卵の様に「あぁ、そうか」となりますが、自分で質に気づくことは難しいし、質を変えることもまた難しい。
いくら「なる程質だな」と思っていても、簡単に質を変えることは出来ない。
合気道の「座りの呼吸法」のように、正面がダメなら、右、左、下、上みたいに変えることが質だと、形を質だと思ってしまう。
質を変えるというのは、今までのやり方ではダメだということですが、それは今までの考えではダメだということでもあり、新しい発想を持たなければならず、そのためには誰かに教えて貰うか、閃きが無い限りは、質は変らない。
また壁の向こう側は、自分が考えている次元にはないものなので、いくら今までの自分の経験や体験、自分が分かっている事、意識していることの中でやろうとしても、ダメなのです。
頭の体操クイズでも、自分では固定観念を持っていないと思っても、実は無意識に枠組みを決めて、その中で考えたりしますが、その枠を取っ払わないと、答えが出ない。
だけど自分でその枠が分からないものだから、自分の先入観、固定観念を捨てようにも、中々変えられない。
私は合気道の呼吸法と呼ばれるもので、一つの気付きを得ましたが、世の中的には、壁がある事は嫌なこと、ダメなものだと思われていて、その壁を無意識的にも避けようとする。
しかし呼吸法(合気道の他の技でもそうですが)では、相手とぶつかる所まで行くことは、悪いことではないし、むしろぶつかる所まで行かなければならず、それを上手く利用することによって、相手を崩すことが出来る。
それと壁は同じことで、壁にぶち当たる事は悪いことではないし、そもそも壁はそこらじゅうにあるものだから、壁が無いというのは、何もしていないか、壁を無意識的にも避けているか、気づいていないかです。
もし壁があった場合は、それを強引に突破しようとしても出来るものではなく、壁を受け止めて、壁を利用する。
また壁を受け止めるためには、壁の所まで行かなければならないし、そこで力んだり、慌てたり、バタバタしない。
リラックスし、自分に集中することによって、受け止めることが出来る。
言うは易しではありますが、参考にしてみてください。